特定技能制度における自社支援とは?制度運用型企業の新たな選択肢を解説

特定技能制度のもとで外国人材を受け入れる企業は、義務的支援10項目を実施することが法令で定められています。多くの企業は外部の登録支援機関へ業務を委託していますが、近年ではこの支援業務を自社で担う「自社支援」という選択肢も注目されています。本記事では、制度全体の運用視点から見た「自社支援」の概要、対応要件、企業が得られるメリット、そして体制構築に向けたポイントを解説します。

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元登録支援機関での実務経験をもとに、外国人支援や企業対応の現場で見聞きした内容を踏まえ、登録支援機関に関する情報をお伝えしています。制度の特徴や支援内容の傾向、選定時の参考となる視点などを、できる限りわかりやすく解説しています。

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特定技能制度における支援義務とは?

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、10項目の義務的支援を適切に実施する責任があります。これには住居確保や生活オリエンテーション、日本語学習支援、定期面談などが含まれ、対象者の生活と労働の両面にわたる包括的な支援が求められます。

この支援は通常、登録支援機関に委託されることが多いですが、企業が一定の要件を満たしていれば、自社で支援を実施する「自社支援」という方式を選択することが可能です。

なぜ今、自社支援が注目されているのか?

近年、特定技能制度の運用が定着し、支援ノウハウを持つ企業が増える中で、外部委託に依存せず自社完結型の支援体制を構築する企業が増加傾向にあります。背景には以下のような要因があります。

  • 支援コスト(委託料)の削減ニーズ
  • 外国人材の定着率向上のため、社内に寄り添う支援を実現したい
  • 複数名受け入れており、業務負担と支援業務の一元化を図りたい
  • 登録支援機関との連携の煩雑さや情報共有の限界を感じている

自社支援を選択するための制度要件

自社支援はすべての企業に認められているわけではなく、一定の実績と支援体制が求められます。以下が主な要件です。

  • 中長期在留者を適切に受け入れた実績が直近2年以内にあること
  • 支援責任者および担当者を社内に設置し、支援体制を構築していること
  • 対象外国人が理解できる言語で支援を実施できること
  • 支援内容の記録・保存を行い、定期報告できる運用体制があること
  • 法令順守・雇用管理上の問題がないこと

自社支援のメリットと制度的な意義

企業が制度を深く理解した上で自社支援を導入することには、単なるコスト削減を超えた意義があります。

  • コスト削減:登録支援機関への委託費(月1.5〜3万円/人)が不要に
  • 支援の柔軟性:企業の実情に応じた支援内容・タイミングを設計できる
  • ノウハウの蓄積:外国人雇用・支援に関する組織内知見が強化される
  • 信頼の獲得:外国人材から見て「支援してくれる会社」として魅力を持てる

支援体制構築と制度運用のポイント

自社支援を成功させるには、単なる担当者配置にとどまらず、制度としての運用フロー整備が重要です。

  • 支援計画を実情に合わせて丁寧に作成・更新
  • 生活支援における外部リソース(通訳、自治体、NPO等)との連携体制を整備
  • 支援内容の記録管理と、年1回の定期報告(2026年以降)を忘れず実施
  • 多言語対応・相談窓口体制は属人的でなくチームで運用する

制度改正と自社支援への影響(2025年対応)

2025年4月の制度改正により、支援体制に関する届出・報告が一本化され、支援実施状況の透明化が進みました。これにより、自社支援を行う企業も以下の点で対応が求められます。

  • 年1回の「定期届出」への一本化(2026年4月〜)
  • 支援困難時の「随時届出」義務化
  • 支援内容の文書化とオンライン申請体制の整備

特定技能 自社支援に関するよくある質問

Q. 登録支援機関を使わず支援しても問題ありませんか?

A. 要件を満たしていれば可能です。ただし、支援体制・記録・届出に関する責任はすべて企業側にあります。

Q. 自社支援と一部委託支援は何が違いますか?

A. 自社支援は支援業務をすべて企業で行う方式、一部委託は特定業務だけ登録支援機関に委託する方式です。制度上明確に区別されます。

Q. 自社支援は途中からでも切り替え可能ですか?

A. はい。支援計画の変更届と、支援責任者体制を整えたうえで申請すれば、委託支援から自社支援へ切り替えることができます。

まとめ|自社支援は特定技能制度運用の“次のステージ”

特定技能制度を単なる採用手段で終わらせず、制度全体を自社で運用・改善していく視点を持つ企業にとって、自社支援は非常に有効な手段です。支援を通じて外国人材との信頼関係を築くことで、長期的な定着や戦力化にもつながります。

制度理解・体制整備・運用力。この3つを備えることで、自社支援は“リスク”ではなく、“戦略”となるのです。