特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、「義務的支援」と呼ばれる10項目の支援を実施することが法律で義務付けられています。これらの支援は、外国人労働者の生活と就労を安定させるための重要な制度です。本記事では、義務的支援の内容や実施方法、支援計画との関係、委託支援との違い、実務対応のポイントまで詳しく解説します。
特定技能の義務的支援とは?10項目の内容・自社対応と委託の違い・実務ポイントを解説
最終更新日:2025年7月28日
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義務的支援とは?法的根拠と制度の目的
義務的支援は、出入国管理及び難民認定法に基づき、特定技能1号で就労する外国人に対して企業または登録支援機関が提供しなければならない支援制度です。対象者の円滑な生活・労働環境を整えることを目的としています。
入管法に基づく義務的支援の定義
義務的支援は、入管法第19条の24および関係省令により明文化されています。実施しない場合、在留資格の認定や更新が不許可となるリスクがあります。
義務的支援の目的
特定技能制度は即戦力人材の受け入れを想定していますが、言語や文化の違いによる生活上の課題も想定されます。義務的支援はこれらをカバーし、長期定着を促進するために不可欠です。
義務的支援の10項目と具体的な支援内容
義務的支援は以下の10項目で構成されており、すべてを網羅的に支援する必要があります。いずれも実施が義務であり、省略はできません。
支援項目 | 主な内容 |
---|---|
①事前ガイダンス | 雇用条件・支援内容・在留資格の説明を外国人が理解できる言語で実施 |
②入出国時の送迎 | 空港〜住居間の送迎、転居時の移動支援 |
③住居確保・生活契約支援 | 住宅探し・賃貸契約支援・保証人代行など |
④生活に必要な契約支援 | 銀行口座、携帯電話、電気・ガス契約など生活インフラの手続き支援 |
⑤生活オリエンテーション | 交通ルール、防災、ゴミ出し、マナー等の生活情報の提供 |
⑥日本語学習支援 | 教材提供、地域教室の案内、日本語学習の習慣化サポート |
⑦相談・苦情対応 | 生活や就労に関する相談窓口の設置、母国語対応が望ましい |
⑧日本人との交流促進 | 地域行事や社内イベントへの参加促進など |
⑨転職支援(離職時) | 離職後の求人紹介や入管への報告など就職あっせん |
⑩定期面談・行政報告 | 3ヶ月に1回の面談と年1回の支援状況報告(2025年改正対応) |
支援計画との関係と作成のポイント
義務的支援は、単に実施するだけではなく、計画的に設計された支援計画に基づいて行う必要があります。支援計画は在留資格申請時に提出し、審査対象にもなります。
支援計画は義務的支援の設計書
支援計画は、いつ・誰が・どのように各支援項目を実施するかを明記した文書です。言語対応や頻度、支援責任者の氏名まで詳細に記載する必要があります。
支援計画作成の流れ
支援計画の作成は、雇用契約締結後〜在留資格申請までに行い、出入国在留管理庁の指定フォーマットに基づいて提出します。
自社支援と登録支援機関への委託支援の違い
義務的支援は、企業が自ら行う「自社支援」と、外部機関に委託する「委託支援」の2パターンがあります。体制やコストに応じて選択します。
自社支援の特徴
自社支援は企業自身で対応するためコスト面のメリットがありますが、支援責任者の配置や語学対応、支援の専門知識が求められます。
登録支援機関による委託支援
登録支援機関に委託する場合、経験豊富な専門家が代行するため安心感があります。多言語対応や記録管理も任せられますが、月額1〜2万円前後の支援費用が発生します。
支援記録・面談・報告の実務対応
義務的支援は「実施記録」と「報告」がセットで必要です。書面での保存と、入管への定期的な報告が義務化されています。
支援記録の管理
各支援実施時の内容・日時・担当者・言語などを記録し、3年間以上保管することが望ましいです。特に登録支援機関に委託している場合でも、企業が最終的に確認する必要があります。
定期面談と記録義務
定期面談は3ヶ月に1回以上実施し、本人の就労状況・生活状況・困りごと等を確認・記録します。2025年の制度改正により報告は年1回に簡素化されましたが、面談実施自体は引き続き必要です。
行政への報告義務
支援活動の実施状況は年1回、出入国在留管理庁へオンラインで届け出ます。不備があると企業や支援機関に対し是正指導が入る可能性があります。
特定技能の義務的支援に関するよくある質問
Q. 義務的支援は全項目実施しなければならないのですか?
A. はい。10項目すべてが必須であり、省略すると在留資格の許可や更新に影響します。
Q. 委託すれば企業の責任はなくなりますか?
A. いいえ。委託していても企業には最終責任があり、支援内容の把握と報告確認は必要です。
Q. 支援計画を途中で変更したい場合はどうすればよいですか?
A. 支援の方法や担当者が大幅に変更になる場合は、再度支援計画の作成・再提出が必要な場合があります。
まとめ|義務的支援は特定技能制度の根幹。確実な運用で信頼ある受け入れを
義務的支援は、特定技能制度の中核をなす重要な要件です。書類上の整備だけでなく、実際の支援内容・実施体制・記録の保存・報告義務に至るまで、企業側に求められる対応は多岐にわたります。
制度理解と信頼できる支援体制の構築こそが、外国人材の定着と円滑な雇用につながります。自社対応・登録支援機関委託を問わず、義務的支援の質を高めていくことが、これからの外国人雇用成功のカギとなるでしょう。