特定技能1号・2号の違い7つを徹底考察

作成日:2024年12月25日

合同会社オルゴニール代表社員・武藤拓矢

武藤拓矢

特定技能・技能実習スペシャリスト

外国人技能実習制度の管理団体で5年勤務し、その後2019年に合同会社オルゴニール(Orgonir)を立ち上げる。
延べ700名を送り出した実務経験から、制度の理解と外国人人材の現場オペレーションに強みを持つ。
製造業・工場と建設業については業界トップクラスの経験の持ち主。

特定技能とは?

特定技能は、深刻化する人手不足を背景に、労働力が特に不足している産業分野で人材を確保するために設けられた在留資格です。この制度は「特定技能制度」と呼ばれ、2019年4月に創設されました。

他の就労可能な在留資格と比べて、特定技能の特徴は就労可能な範囲が広い点にあります。単純労働をメインとする業務はできないものの、単純労働を含む業務には従事できるため、幅広い活躍が期待される在留資格と言えるでしょう。

特定技能は『1号』と『2号』がある

対象となる産業分野ですが、特定技能1号は12分野(旧14分野)、特定技能2号は11分野(旧2分野)で、介護分野が2号対象外です。

2022年までは建設と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、2023年に9分野で追加されています。介護分野は他に移行可能な在留資格があることから、対象から除外されています。

特定技能2号は、2022年以前は「建設」と「造船・舶用工業」の2職種に限られていました。一方、特定技能1号には通算5年までという在留期限があり、2019年初期から特定技能で在留している外国人の期限が迫っています。そのため、2023年には対象分野の拡大が行われました。

ただし、「介護」分野については、在留資格「介護」などの別の移行先があるため、特定技能2号の創設は見送られています。

今後、特定技能2号を取得するために、まず1号を取得して働きたいと考える外国人が増加することが予想されます。その結果、採用競争が激化する可能性があります。したがって、今のうちに採用の検討を始めることをおすすめします。

特定技能『1号』『2号』の違いは7つ

特定技能1号と2号はそれぞれ異なる性質を持ちます。それぞれの項目の詳細について解説していきます。

①対象分野の違い

特定技能1号 12分野
特定技能2号 11分野(介護以外)

特定技能1号と特定技能2号では、対象となる分野が異なります。現在では介護以外は同じとなり、今後は介護も対象分野となる可能性が高いです。

②在留期間の違い

特定技能1号 在留期間は通算5年まで。
特定技能2号 無制限

特定技能1号は、在留期間が通算5年までと制限されています。一方、特定技能2号では更新が可能で、在留期間に上限がありません。そのため、特定技能2号を取得し、継続して更新することで、実質的に永住することも可能です。

ただし、特定技能ビザは就労を目的としたビザであるため、雇用されていることが前提条件となります。

③永住権の違い

特定技能1号 なし
特定技能2号 可能性あり

特定技能2号は、永住権の取得要件を満たす可能性がありますが、特定技能1号ではそれができません。
これは、出入国在留管理庁の永住許可に関するガイドラインに基づいています。永住権を申請するには、原則として10年間の在留が必要とされていますが、技能実習および特定技能1号での在留期間は、この10年には含まれません。

ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

一方で、特定技能2号には在留期間の上限がないため、更新を続けることで10年以上の在留が可能となり、永住権の申請資格を得ることができます。

なお、永住権の申請には他にも満たすべき要件があるため、詳しい条件や手続きについては、関連する公式ガイドラインや以下の記事を参考にしてください。

④技能水準の違い

特定技能1号 一定の技能
特定技能2号 熟練した技能

特定技能2号では、特定技能1号よりも高い水準の技能が求められます。

例えば建設分野における「配管」業務では、以下のような違いがあります。

  • 1号……「配管(指導者の指示・監督を受けながら配管加工・組立て等の作業に従事)」
  • 2号……「配管(複数の建設技能者を指導しながら、配管加工・組立て等の作業に従事し、工程を管理)」

同じ「配管」の分野でも、特定技能2号では、他の技能者を指導したり、工程を管理するなど、より高度で指導的な経験が求められます。

⑤外国人支援の違い

特定技能1号 必須
特定技能2号 不要

特定技能1号では、外国人への支援が義務付けられています。過去2年間に外国人社員が在籍していない場合、支援業務を「登録支援機関」に委託する必要があります。さらに、過去2年間に外国人社員が在籍していた場合でも、多くの中小企業では人材や費用の面で自社支援が困難なため、登録支援機関への委託が一般的です。

一方、特定技能2号では、外国人支援の計画策定や実施が求められないため、企業の負担が軽減されます。

⑥家族帯同の違い

特定技能1号 不可
特定技能2号 条件付き可能

特定技能1号では、原則として家族の帯同は認められていません。

一方、特定技能2号の場合、一定の要件を満たせば配偶者や子供を本国から呼び寄せることが可能です。この場合、配偶者や子供には在留資格が付与され、日本で一緒に生活することができます。

⑦試験の違い

特定技能1号 技能試験+日本語試験
特定技能2号 熟練技能試験

特定技能1号では、技能試験に加えて、日本語能力を確認する試験が必須となっています。

一方、特定技能2号の取得要件には、現時点で日本語試験の実施は含まれていません。

特定技能『1号』と『2号』の取得方法

特定技能1号と2号の在留資格の取得方法について、要件や試験などについて解説します。

h3 特定技能1号の取得方法

特定技能1号の場合は、

  1. パターン1:特定技能測定試験に合格する方法
  2. パターン2:技能実習から移行する方法

の2パターンがあります。

パターン1:特定技能測定試験

12業種の分野ごとに用意されている技能試験と、日本語能力試験の2つの試験に合格する必要があります。

詳細は各団体のホームページよりご確認いただけます。

介護 ビルクリーニング 製造3分野 建設
造船・舶用工業 自動車整備 航空 宿泊
農業 漁業 飲食料品製造業 外食業

パターン2:技能実習から移行

以下の要件で移行をすることができます。

  • 技能実習2号を良好に修了していること
  • 技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること

また、技能実習を良好に3年間終了し(技能実習2号まで)、職種と作業内容が移行する特定技能1号の業務に関連性が認められる場合は、技能試験と日本語試験が免除されます。技能実習時と異なる業務を行う場合でも、技能実習2号を良好に修了している場合は日本語試験が免除されます。

特定技能2号の取得方法

特定技能2号を取得するためには、該当分野の2号試験に合格することが必要です。

もともと特定技能2号の取得は、特定技能1号からの移行のみ認められていました。しかし、2023年秋以降、特定技能1号以外の在留資格からの移行も可能となりました。ただし、特定技能1号からの移行の場合でも、その他の在留資格からの移行の場合でも、試験に合格することが必須条件となります。

  • 「班長としての一定の実務経験」
  • 「日本国内の企業で該当分野の実務経験3年以上」
  • 「管理職相当の実務経験を証明する書面の提出」
  • 「試験の申し込みは企業が行う」

etc

これらの条件を考慮すると、特定技能1号で就労経験がない場合には取得が難しい分野も存在する可能性があります。

まとめ

特定技能は、日本の人手不足を補うために設けられた在留資格で、特定技能1号と2号の2種類があります。

1号は12分野、2号は11分野が対象で、それぞれ在留期間や技能水準、支援の有無などに違いがあります。

2号は永住権取得の可能性もあるため、長期的な就労を目指す方に適しています。

必要な試験や条件を理解し、適切な準備を進めることが重要です。