特定技能の費用相場 | 国内・国外外国人別の初年度・2年目以降の費用まとめ

作成日:2024年12月20日

合同会社オルゴニール代表社員・武藤拓矢

武藤拓矢

特定技能・技能実習スペシャリスト

外国人技能実習制度の管理団体で5年勤務し、その後2019年に合同会社オルゴニール(Orgonir)を立ち上げる。
延べ700名を送り出した実務経験から、制度の理解と外国人人材の現場オペレーションに強みを持つ。
製造業・工場と建設業については業界トップクラスの経験の持ち主。

「結局、特定技能外国人を受け入れると費用はいくらかかるの?」
「日本人を採用する費用とどちらの方が高いの?」

有効求人倍率は平均1.29を超え、建設業に至っては4.77倍と人材難が著しく進んでおり、外国人人材の採用に興味を持ち始める方は非常に多いです。

特に人手不足が深刻とされる12分野(14業種)においては顕著にお問い合わせに来られる方が多く、この12分野の外国人採用に活用できる制度が特定技能制度です。

ただし制度が非常に難解で、多くの企業は「結局いくらかかるの?」と具体的な数字が見えず足踏みされているケースを良く見かけます。

そんな特定技能制度を活用したいが具体的な費用がわからず足踏みしている企業の社長様、人事担当者様に向けて、外国人人材の採用のプロが特定技能制度の費用相場を徹底解説していきます。

特定技能外国人の受け入れ費用相場

国内外国人人材・国外外国人人材別で初期費用・運用費用

特定技能外国人を受け入れる際、「日本在住の外国人」を受け入れるか「海外在住の外国人」を受け入れるかによって費用が異なります。

それぞれの費用相場を「初期費用」「運用費用」にわけて解説していきます。

日本在住の外国人を特定技能として採用する場合

項目 金額
初期費用 22〜44万円
運用費用 15〜30万円/年

初期費用の内訳

項目 金額
人材紹介料 10〜40万円/回
事前ガイダンス 2〜4万円/回
在留資格申請・変更費用 10〜20万円/人
住居の準備費用 ※ 要相談。(本人負担あるいは企業負担)

まずは初期費用として発生するのが「人材紹介料」です。これは日本人を採用する場合と同様に、人材紹介会社から特定技能人材を紹介してもらう場合に発生します。自社で条件に合致する外国人人材を探した場合は不要となります。

運用費用の内訳

特定技能制度の運用費用は、0円で運用することも可能です。

項目 金額
在留資格更新費用 3〜6万円/更新都度
義務的支援委託費用 1.5〜4万円/毎月
給与・福利厚生 雇用条件によって異なる。

海外在住の外国人を特定技能として採用する場合

項目 金額
初期費用 27〜114万円
運用費用 15〜30万円/年

数字を見てわかる通り、国内在住の外国人を特定技能として採用する場合、初期費用が大きく異なります。

初期費用、運用費用を具体的に見ていきます。

初期費用の内訳

項目 金額
送り出し機関手数料 10〜60万円/人
人材紹介料 20〜40万円/回
事前ガイダンス、生活オリエンテーション 2〜4万円/回
在留資格申請・変更費用 10〜20万円/人
入国時の渡航費用 ※ 要相談。(本人負担あるいは企業負担)
住居の準備費用 ※ 要相談。(本人負担あるいは企業負担)

海外在住の外国人を採用する場合、一部の国では「送り出し機関手数料」が必須で発生します。

「送り出し機関手数料」について補足すると、多くの送り出す国と日本は技能実習制度や特定技能制度に関する二国間協定(Memorandum of Cooperation: MOC)を締結しており、労働者保護の目的として、送り出す国の特定の機関を通してでないと特定技能制度が認められない取り決めがあります。

この協定は、不正行為を防止し、労働者の権利を守ることを目的としています。その中で、送り出し機関手数料の取り扱いに関する規定も定められています。

送出し機関を必ず通す国としては以下3つが確認されています。

  1. フィリピン
  2. カンボジア
  3. ベトナム

国や送り出し機関によっても異なりますが、10〜60万円/人程度かかります。

運用費用の内訳

項目 金額
在留資格更新費用 3〜6万円/更新都度
義務的支援委託費用 1.5〜4万円/毎月
給与・福利厚生 雇用条件によって異なる。

国内外国人人材を採用する場合と同様です。

【要注意】建設業のみ国土交通省・業界団体への支払いがある

定技能外国人を建設業で受け入れる場合、以下の5つの条件を全て満たす必要があります。

  1. 建設業許可を受けていること
  2. キャリアアップシステムの事業者であること
  3. JAC(建設技能人材機構)に加入していること
  4. 受け入れ人数の上限が日本人の社会保険加入者数内であること
  5. 国土交通省が定める基準を満たす雇用条件であること

特に「JACへの加入」については、他業種にはない追加の費用が発生します。

特定技能制度における費用は通常、「送り出し機関」「受入れ機関」「採用する外国人」にかかるものが基本です。しかし、建設業ではJACへの加入、あるいは賛助会員が必須条件となり、JACへの正規会員の場合は以下の費用が発生します。

項目 金額
年会費 36万円/事業所
月会費(受入負担金) 12,500円/人(年間15万円)

JAC(建設技能人材機構)とは「Japan Association for Construction Human Resources」の略で、日本の建設業界で特定技能外国人をサポートするための団体です。以下のような活動を行っています:

  • 特定技能外国人が日本の建設現場で円滑に働けるよう支援
  • 技術や知識を習得できるプログラムの提供
  • 建設現場の人材不足を解消するための仕組みづくり

JACへの加入は、特定技能外国人を建設業で受け入れる上で欠かせないステップであると同時に、必要な費用負担でもあります。これらの条件を事前に把握し、準備することがスムーズな受け入れに繋がります。

業界団体への支払いを抑える方法

特定技能外国人を受け入れる際のJAC(建設技能人材機構)への加入費用は、正会員よりも賛助会員として加入する方がコストを抑えられる場合があります。

例えば、「一般社団法人 全国中小建設工事業団体連合会」の場合、賛助会員としての年会費が比較的安価に設定されています。

また、他にも2つの必須業務が発生します。

建設業で特定技能外国人を雇用するには2つの手順を踏みます。

  1. 建設キャリアアップシステム
  2. 建設特定技能受入計画書の認定(建設業許可)

JACへ加入する際に発生する年会費と月会費は次の通りです。

項目 金額
年会費 36万円
受入負担金 12,500円/月(年 15万円)

特定技能の費用で本人負担で良いもの

住居費用

敷金・礼金、またエアコン・洗濯機・冷蔵庫などの家電、ネット環境整備のwifiも必須なため、金額として50万円を超えます。

【業種別】特定技能外国人の年収相場

特定技能の費用相場と同様に、現在の特定技能外国人の年収相場も気になると思いますので、業種別に年収相場を書き出してみました。

特定技能の受け入れ手続きを全て自社で行う方法

特定技能外国人の採用から定着まで、全ての業務を自社で行うことも可能です。

具体的にやることは以下の4つです。

  1. 外国人人材を探す
  2. 外国人人材と面接をする
  3. 事前ガイダンスを実施する
  4. 在留資格を申請する
  5. 義務的支援を行う
  6. その他業務

ただし、制度が複雑かつ関係各所に適切な期間内に手続きを踏む必要があり

特定技能外国人人材探しから義務的支援、事前ガイダンスから

特定技能外国人の採用コストを抑える方法

特定技能外国人の採用では、コスト削減が重要です。以下の2つの方法で効率的な採用を目指しましょう。

自社で全ての手続きを行う

在留資格申請や雇用契約、生活支援などの手続きを自社で行うことで、仲介手数料を削減できます。政府のガイドラインや研修を活用すれば、必要な知識を得ながら効率化が可能です。

国内外国人人材を自社で探す

国内にいる外国人人材を求人サイトやSNSで探すことで、仲介費用や渡航費を抑えられます。資格切り替えがスムーズな点もメリットです。採用後のサポートを充実させれば、定着率の向上にもつながります。

外国人採用・育成で活用できる助成金

特定技能のみならず、外国人労働者を雇用している事業主が活用できる助成金が『人材確保等支援助成金 〈外国人労働者就労環境整備助成コース〉』です。

外国人の職場定着への取り組みに対して一部を助成する助成金で、最大72万円を上限額となります。

主な条件は以下の通りです。

主な受給要件

(1)外国人労働者を雇用している事業主であること
(2)認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
1雇用労務責任者の選任
2就業規則等の社内規程の多言語化
3苦情・相談体制の整備
4一時帰国のための休暇制度の整備
5社内マニュアル・標識類等の多言語化
(3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること

受給額・対象経費

区分 支給額(上限額)
賃金要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2(上限額57万円)
賃金要件を満たす場合 支給対象経費の2/3(上限額72万円)

受給額・対象経費

(1)通訳費(外部機関等に委託をするものに限る)
(2)翻訳機器導入費(事業主が購入した雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入に限り、10万円を上限とする)
(3)翻訳料(外部機関等に委託をするものに限り、社内マニュアル・標識類等を多言語で整備するのに要する経費を含む)
(4)弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限り、顧問料等は含まない)
(5)社内標識類の設置・改修費(外部機関等に委託をする多言語の標識類に限る)

助成金を活用する上で取り組むべきこと

助成金を活用する上で「雇用労務責任者を選任すること」と「就業規則等の社内規程の多言語化」の2つを実施し、かつ以下の3つの選択メニューから1つを実施する必要があります。

選択メニュー 詳細
苦情・相談体制の整備 全ての外国人労働者の苦情または相談に応じるための体制を新たに定め、外国人労働者の母国語または当該外国人労働者が使用するその他の言語により苦情・相談に応じる。
一時帰国のための休暇制度の整備 全ての外国人労働者が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得できる制度を新たに定め、1年間に1回以上の連続した5日以上の有給休暇を取得させる。
社内マニュアル・標識類等のた言語化 社内マニュアルや標識類等を多言語化し、計画期間中に、それを使用する全ての外国人労働者に周知する。

また、支給要件には「外国人労働者の離職率」や 「日本人労働者の離職率」などもあるため、活用する際は専門家に依頼することをおすすめします。

特定技能の費用まとめ